はるのゆめ

ベルサイユのばらが大好きです

どこへも嫁がないぞ・・一生

三部会が開かれ、会議場周辺の警備などで、オスカルは、休暇もなく、激務が続いているようです。

珍しく、つかれたと言って椅子に腰を下ろします。アンドレが隣りに腰かけ、話しかけていると、オスカルが寝入っていることに気がつきます。オスカルは、アンドレの胸にもたれています。

一番安心できる相手なんでしょうね。

かわいそうに、つかれきっているのかとオスカルの顔をのぞきこむアンドレ

女の身でなぜこうまで・・

オスカルの寝顔を見つめます。

愛おしさが募り、ためらいながらも、オスカルの髪に優しく手を触れようとするアンドレ

オスカルは実は目が覚めています。

目を閉じたまま、アンドレと言います。

驚いて手を引っ込めるアンドレ

じっとアンドレを見つめるオスカルの表情が、何かもう神々しいまでに、美しいですね。もう揺るがない、迷いのない表情に見えます。そして、

「もう・・・どこへも嫁がないぞ・・一生・・」そして、ふふっと笑って、オスカルは、また目を閉じて寝ようとします。

アンドレの目からは、涙が溢れ、上を向いて、涙がこぼれないように、指で押さえます。

アンドレが、これまでで、オスカルから一番聞きたかった言葉です。

アンドレが、一番恐れていたこと、それはオスカルがほかの男性のもとに嫁ぐことです。

そのために、生きていけないと思い詰めて、苦しんだ時期もあったので、どこへも嫁がないという、この言葉を聞くことができて、どんなに安堵し、嬉しかったことでしょう。

何かのついでのように、思い出したように、さりげなくこんな大事なことを伝えるオスカルの姿

そして、本当は、号泣したいくらい嬉しいのに、涙を堪えて、抑えた喜びを噛みしめるアンドレの姿がなんだか、とても素敵です。

アンドレの安堵した姿、そして、とっても近い距離で、寝ているのか、寝たふりなのか、アンドレのそばに座っているオスカル、なんだかホッとして見守りたくなるシーンです。

 

 

 

ビョルン・アンドレセン

トーマスマン原作の「ベニスに死す」がルキノ・ヴィスコンティによって映画化され、公開されたのは1971年です。

その中で、美少年のタジオを演じたのが、ビョルン・アンドレセンです。

ベルサイユのばら」のオスカルも「オルフェウスの窓」のユリウスも、木原敏江先生の「摩利と新吾」の摩利も、ビョルン・アンドレセンがモデルだそうです。

わたしは、摩利が一番似ていると思います。ビョルン・アンドレセンは綺麗なんだけど、映画の中で動いている姿は、女性の美しさとは違います。本当に綺麗なんだけど男の子に見えます。

オスカルもきっとそんな綺麗な男の子という、容貌だったのかもしれませんね。

若い時は、割と男の子に間違えられてますよね。その度に結構ショック受けているところがまた可愛いです。

ビョルン・アンドレセンの写真載せます。

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原作では描かれなかったが

前回記事から、少し時を進めたいと思います。

1789年7月14日、バスティーユ攻撃と、その前日の暴動が発生したテュイルリー宮広場の二つの戦闘で命を落とした、アンドレとオスカルの亡骸は、どうなったのでしょうか。

ロザリーとベルナールが二人の死に立ちあっているため、おそらく、ジャルジェ家に、戻されたのではないかと思います。

しかし、長年王家にお仕えしてきた、ジャルジェ家で、王家を裏切り、民衆側についたオスカルを父ジャルジェ将軍が表むきは許すことはできないと思います。

ただ、パリに出動する朝に、「いくがいい、おまえの選んだ道を、その情熱の命ずるままに・・」と自分とは違う道を進んでいく、娘の生き方を認めていました。

また、ジャルジェ夫人の気持ちを考えると、オスカルの亡骸を受け入れたのではないかと思います。

ロザリーから、オスカルの最期の様子、また、ベルナールからアンドレの最期の様子を聞いたと思います。その場にはジャルジェ将軍と夫人、ばあやはあまりのショックにベッドから出られなかったのではないかと思います。

そして、ロザリーは、「わたしたちは、夫婦になったのだから、同じ場所に埋葬して欲しい」という、オスカルの遺言をジャルジェ将軍と夫人に伝えたと思います。

お葬式は、ごく身内だけで、ジャルジェ将軍、夫人、そして、ロザリーとベルナールが立ち会い、二人を同じ場所に埋葬したのではないでしょうか。

ばあやはショックで寝込んでいて、お葬式には行けなかったでしょうか。そして、おそらく、二人が亡くなったあと、二人のあとを追うように、亡くなったと思われます。

オスカルの肖像画を描いた画家が、ジャルジェ家を訪ねてきた時に、ばあやも亡くなった直後なのかなと思いました。ばあやが最も愛していたアンドレとオスカルの魂が、迎えに来ているような描写に見えました。

ばあやも、オスカルとアンドレの近くに埋葬されたと思います。

場所はどこでしょうか。

アンドレが8歳まで、住んでいた故郷の村に、アンドレの両親のお墓があるのなら、その近くなのかもしれないと思います。

あとは、ジャルジェ家の領地がある、アルトア州アラスという可能性もあるのかもしれません。

原作に描かれてはいませんが、そんな気がします。

 

アンドレの心中未遂

毒入りワインを持ち、オスカルの部屋に行くアンドレ、そこには、ヌーベルエロイーズを読み、涙がこぼれてとまらないのだと言うオスカルの姿があります。

アンドレは、このオスカルの涙の意味には、気がついてはいません。そして、一緒に死のうという決意も変わらないようです。

でも、ここで、オスカルは死期が近づくと、と言ってアンドレをドキッとさせ、なぜか昔のことばかり思い出してしまうと言って、14歳の頃の自分のことを話し始めます。

「まだ、士官学校も終えないのに、国王陛下に任命されて、近衛連隊に入隊したのが、うれしくて、マリーアントワネットさまづきの近衛士官に選ばれたのが、うれしくて」と語ります。

「父上のおことばどおり、わたしが、わたしが、この類いまれな美しい妃殿下をおまもりするのだと・・」

「命にかえても、未来のフランス女王をおまもりするのだと」

「こんな調子ではわたしも先が長くないぞ」と自嘲気味に語るオスカル

この時、アンドレの脳裏に浮かんだのは、自分自身が起こした、マリーアントワネットの落馬事件のことです。

この時、オスカルが自分の命を投げ出して、アンドレを守ろうとしたことを思い出したのです。

その時の自分の決意をアンドレは思い出します。

「おれはいつかおまえのために命をすてよう、おまえがきょうこのおれのために命をかけてくれたように、いつか、おまえのためにアンドレはこの命をかけるぞ」

今自分はまったく逆のことをしようとしているではないか。オスカルの命を奪おうとしている。

アンドレはとっさに、のむな、のむなオスカルと言って、オスカルを止めようとして、オスカルを突き飛ばし、押し倒します。ワイングラスは床に落ちて割れます。そしてアンドレは良かったと涙を流します。

「なんという思いあがり、何という自分勝手な」と自分の身勝手さを恥じ、おれはこんな男だったのかと涙を流すアンドレ、なんの権利があって、おまえの命を・・おまえの人生を・・

アンドレは、悪かったと言って、ワイングラスを片付け始めます。

まだ、何が起こったのか分からないオスカルは、呆然としています。割れたワイングラスで、指から血が出るアンドレを心配して、「アンドレ手が・・」と言います。

こういう優しいオスカルが、私は大好きです。アンドレは、「近よるなっ!!」と叫びます。

オスカルは、呆然としながらも、何があったのかを察します。そして、母の部屋に行くのです。

一方アンドレは、オスカルのことをきっとまもってやる・・この命がつきるまでと、今までの苦しみが、嘘のような、清々しい表情を浮かべます。

この心中未遂事件をきっかけに、アンドレの心は180度変わっていきます。

アンドレの愛は、見返りを望まない無償の愛に昇華していった気がします。ジャルジェ将軍が、オスカルを成敗しようとした時も、自分の命を差し出し、オスカルを守ろうとします。

そして、アンドレはほぼ失明し、オスカルを守ることが難しい状況になっていくのですが、そのことを隠して、オスカルと共に、パリにも出動して行きます。そして、自分自身の命をかけて、最後までオスカルを守り抜きます。

 

アンドレの決意

オスカルの結婚話が持ち上がってから、アンドレはずっと苦しんでいます。

身分の違いという、自分ではどうすることもできない状況を、若い頃から受け入れて、恋心を表には出さずに、オスカルの側にずっといたアンドレです。

それは仕方ないことと諦めの気持ちもあったと思います。

でも、オスカルをほかの男の手にわたすくらいなら、だんなさまにでも射殺されてしまったほうがましだと、以前愛の告白をした時にもオスカルに語っていました。

あの時は、具体的な話しが、あったわけではありませんが、今回は違います。このままでは、オスカルはジェローデルと結婚してしまうかもしれない。 

アンドレは絶望感と焦りに囚われ、苦しい日々を過ごしています。

そして、ヌーベルエロイーズを読み、ついに、共に死ぬ道を選ぼうとしてしまいます。

この時のアンドレは、自分の苦しみに心を支配され、オスカルの気持ちを考えることが出来なくなっていました。

「なぜ・・なぜ生きてきた、いままで、なんのためにいったい生きてきた・・」

アンドレは、生きる意味を見失っています。そして、愛するオスカルの命を絶とうとまで、追い詰められています。

ヌーベルエロイーズという本が、当時の大ベストセラーとなっていたことを考えると、アンドレのような身分違いの恋に共感する人がいかに多かったかということの証しのような気がします。

人を愛する心は自由なはずですが、それが叶わない社会だったということだと思います。

 

 

貴族と平民

オスカルの結婚話が持ち上がった時に、アンドレは自分が平民であることを呪います。

オスカルのそばで、ずっとオスカルを見つめ続け、愛してきたアンドレです。

どんなにひくくてもいい、貴族の身分があれば、だれにもにわたしはしない、どんなにどんなに愛してもだめなのか、身分のない男の愛は無能なのか

草の上で、号泣するアンドレの姿

別の日にアンドレとアランが語り合う場面があります。

身分違いの恋に苦しみ、ヌーベルエロイーズを読みながら、死によってしか結ばれない愛を一瞬考えてしまうアンドレ、そこに現れるアラン、身分身分と生きているのがあほくさくなると言うアラン

なにぬかすか、てめぇも貴族じゃないかと軽く言うアンドレに対し、

知っているか、平民以下の暮らしをしている貴族だってあるぞ、寒い吹雪の夜もおなかを空かせて、身を寄せ合うことしかできない、それでも貴族だぞとアンドレに詰め寄ります。それはアランの家族の姿です。

はなせ、悪かったと謝るアンドレ

平民以下の暮らしをしている貴族である、アランの妹ディアンヌは、結婚の日を、心待ちに幸せそうに過ごしていましたが、婚約者は金持ちの平民の娘と結婚してしまうというエピソードが、こののち描かれます。

どんなに低くてもいいから、貴族の身分が欲しいと願うアンドレと、貴族だけど、極貧のなかで生活をしているアランの家族、この対比が鮮明で、考えさせられてしまうシーンです。

そして、アランのオスカルに対する気持ちも語られています。

大貴族の令嬢なのに、軽蔑しぬいてやることも、憎みきることもできないと、俺はあの女が嫌いだと言っています。

そして、アンドレの目が、見えなくなってきていることに、アランが気づきます。

心配するアランに対し、だれにもしゃべるな、しゃべったら殺す!と言って、口止めをするアンドレ、いつの間にか、お互いを認め、親友のようになっている二人です。

 

 

 

 

酒場の大喧嘩のあと

前回、オスカルがアンドレのキスを思い出したところを記事にしましたが、そこはどんなシーンだったか、少し時代を遡ります。

時は1783年、イギリスとの独立戦争が終わり、アメリカに赴任した遠征軍がぞくぞくと戻り始めていますが、戦地に赴いた、フェルゼンは戻ってきません。

オスカルは心配で心配でイライラしています。あまりにも心配で多分お酒を飲んで気を紛らわしたかったのでしょう。

そして、アンドレと一緒に酒場に行きます。平民たちが集まる酒場のようで、近衛隊士であるオスカルは、喧嘩を売られて、酒場で大暴れします。

後半で、重要なキャラクターとなる、ベルナールシャトレ、ロベスピエールも登場します。

血の気が多い上に、底なしにお酒も飲めて、喧嘩の強いオスカル、この頃のオスカルは、ホント男らしいです笑

オスカルくたばったのかと言って、頬をペチペチするアンドレに、気を失っているふりをしていますが、ホントはタヌキ寝入りをしているオスカル。

この頃には、すでにオスカルを愛していたアンドレ、そしてオスカルがフェルゼンにずっと片想いをしていることも知っていました。

かわいそうに、どれほど苦しいだろう。どんな格好をしていても、おまえは間違いなく女だ。こみあげる心の苦しみをひとりではかかえきれないこともあるだろうにというアンドレのモノローグ。

そして、アンドレは優しくオスカルにキスをします。慈しむような優しい優しいキスです。

「星がきれいだ・・このまま朝までお前を抱いて歩くぞ」

オスカルはアンドレに抱っこされて、そのまま寝たふりをしながら、涙を流しています。アンドレの優しさが嬉しかったのでしょうね。

星空の下、若い頃のオスカルとアンドレの心に沁みる名シーンです。