レオニード・ユスーポフ候の妻です。皇帝陛下の姪にあたる人です。
当初、夫婦関係はうまくいっているようには見えませんでした。
気位が高く、わがままな女性である、アデール夫人と、仕事優先のレオニードは、形だけの夫婦関係に見えました。もともとが、皇帝陛下の命令により結婚した二人でした。
アデール夫人は、レオニードは心が石で出来ていると言います。氷なら溶けることもありますが、石だと言うのです。
もともと、冷えていた夫婦関係がさらに破綻していく原因の一つが、怪僧ラスプーチンに対する、レオニードの対応があります。災いの種だと言って、ユリウスを差し出せと迫るラスプーチンに対し、レオニードは拒否をします。
宮廷で力を持つラスプーチンを敵に回すことは、良策ではないと考えたアデール夫人は、夫には何も言わずに、ユリウスをラスプーチンに引き渡します。ユスーポフ侯爵家の安泰と夫であるレオニードの地位を保証して欲しいと、ラスプーチンに言うのです。
ここでも、本当は夫を愛しているアデール夫人の本心が分かりますが、レオニードは、「利用されただけだということが、分からないのか」と言い、ユスーポフ家になにかあったときには、そなたを巻き添えにしようとは思わぬ、離縁しても良いと告げるのです。
レオニードは父親が暗殺された時、感情を抑えきれずに、ユリウスを抱きしめ、ユリウスの前で涙を流します。その様子を見て、アデール夫人はショックを受けます。
でも、どうせあの人は皇帝の姪だということで、仕方なくわたしと結婚したのだからと、自分を納得させようとするアデール夫人ですが、本当はレオニードを愛しています。
レオニードは、アデール夫人が自分を愛しているとは思っていないし、むしろ、この頃にはユリウスに惹かれ始めているのです。そのように、心はすれ違いながら、結局は皇帝陛下の命令で離婚をすることになります。
しかし、アデール夫人は、レオニードがラスプーチンを暗殺しようとしていることを知り手助けをすることを申し出ます。この時のアデール夫人とレオニードの、お互いを想い合い、感謝する姿は素敵でした。
アデール夫人はこれがわたくしの精いっぱいのあなたへの愛です。こんなことぐらいしかできませんが・・と思うのですが、こんなことぐらいではないと思います。アデール夫人の協力がなかったら、この暗殺計画は成功しなかったと思います。
そして、いちどでもいい、あなたのお役にたてればと想うアデール夫人のレオニードへの愛の姿は、「オルフェウスの窓」のなかに描かれている愛のなかで、激しさはありませんが、心に残る静かな愛の姿です。