アンドレとの結婚
「アンドレグランディエの妻に」という一言、茫然とするアンドレ。
アンドレからすると、驚きの連続かもしれません。もうどこにも嫁がないぞ一生と言っていたオスカル、その言葉だけで、充分嬉しかったアンドレです。
そのオスカルが自分を愛していると言ってくれた時も、すごく驚いたのです。でも、本当に嬉しかったと思います。
そして、愛し合っているなら、体を重ねてみたいと思っていたアンドレですが、俺には過ぎた望みなのかと考え、あきらめていました。
オスカルのような、大貴族の令嬢が、平民のアンドレと結婚するということは、当時の貴族社会では、有り得ないことなのだと思います。
貴族社会では、家柄の釣り合いのとれたもの同士が結婚して、跡継ぎをつくることが求められ、そのあとは恋愛するのは、比較的自由で、それが許される社会だったようです。
だから、エピソード編でも、ジェローデルのお母さんは若い恋人がいたり、ポリニャック夫人も、夫の親友を恋人にしていると言っていました。
当時の貴族社会では、貴族の令嬢が平民の男性と結婚するということは、貴族社会からは外れ、貴族としては生きていけないことになると書いてあるものを見つけました。
オスカルが貴族として、自由恋愛の前提で、アンドレと肉体関係を結んだ場合、それは結婚ではなく、ただの愛人関係です。
それさえも、身分の違いのある二人なので、貴族社会の中で認められる関係なのかどうか分かりません。
でも、オスカルは、平民のアンドレとの結婚を考えています。それは、貴族社会から外れることを良しとする覚悟がなければできないことなのです。
アンドレとの結婚を決断している時点で、オスカルは、貴族社会から訣別しようとしていたと考えることが自然です。
だから、翌日もアンドレは「オスカルはなぜだまっている、オスカルの考えていることを、すべて理解していると思っていたのは、まちがいだったというのか」と考えるのですね。
何とも、奥深いです。でも、そうは言っても、アンドレは明日もまた、オスカルのひと言に驚いてしまうことになります。
「アンドレ、この戦闘がおわったら結婚式だ」とオスカルは言うのです。アンドレは言葉がでないほど驚いていました。
オスカルの理想の結婚は、自分の両親の結婚なのかもしれません。二人は当時としては、珍しい恋愛結婚、そして、ずっと愛し合っている夫婦です。
ただ単に愛しているからという以上に、深い意味のある夫婦の契りなのですね。池田理代子先生のすごさに驚いてしまいます。
オスカルは貴族の身分を捨てて、アンドレとの結婚を考えていたと私は思います。
二人が夫婦となるシーンに、
「よろこびのときはよろこびのままに、悲しみのときは悲しみのままに、生きることをわかちあってきた、そして、これからもわかちあうために、すべてをあたえあう」という記述があります。
この場面は数ページにわたりますが、すべての絵柄が美しく本当に素敵だと思います。