前回「アンドレとの結婚」の記事で、オスカルは、アンドレとの結婚を決意し、当時の貴族社会の中では、身分の違う二人は結婚できないため、オスカルは貴族の身分を捨てることも考えていたと書きました。
もう少し、二人のこの夜の気持ちを考えてみたいと思います。
アンドレは、オスカルと契りたいと思っていました。気のとおくなるほど、自分を抑えてきたと語っていました。
でも、おれには過ぎた望みなのかと考えています。アンドレからは、いくら望んでも、オスカルとの結婚を言いだすことはできません。それはアンドレが平民だからです。
一方、オスカルも、パリへの出動命令が出て、自分たちの命が明日どうなるか分からない、そして、吐血もし、どちらにしても、自分の命はあまり長くないのではないかと考えていたと思います。
そのような状況で、結婚という未来を考えることが本当にできるのでしょうか。
でも、そういう状況だからこそ、この時を逃したら、アンドレと結ばれることはないと考える理由にはなりえます。
オスカルはもしかしたら、今宵一夜、今宵限りの夫婦の契りとなるかもしれないという気持ちも、どこかにあったのではないでしょうか。どこかに死を意識しているようなオスカルを感じます。
オスカルは明確に、アンドレ・グランディエの妻にと言って、妻という言葉を使っています。
そして、体が結ばれたあとで、アンドレのことを、わたしの夫と言っています。
一方、アンドレも、オスカルの「アンドレ・グランディエの妻に・・」という言葉に対し、自分には地位も身分も財産も何もない、男としておまえを守ってやるだけの武力もないとこたえています。
これは、オスカルの言葉をそのまま受け止め、きちんと結婚というものを考えて、こんなおれのために、身分を捨てていいのか、こんな何の力もない男の妻になっていいのかという気持ちだと思います。
そして、そのように言うアンドレに対し、オスカルは、アンドレを、心やさしくあたたかい男性、そして真に男らしいたよるにたる男性だと言っています。
そして、すぐそばにいて、わたしをささえてくれるやさしいまなざしに、気づくのがおそすぎなくて、良かったというのです。
こんな風に、愛するオスカルに言われたアンドレは、どんなに嬉しかったでしょうか。
アンドレはほぼ失明していますが、そのことを隠して、オスカルを守るために、パリに共に出動する覚悟です。そこには、当然死を意識する気持ちがあります。
この夜の二人は、ともに心の中に、死を意識しています。でも、本当に心から愛し合っている二人なので、この時だけは、夫婦になった喜びをともにかみしめています。
涙を流し、愛しているよというアンドレ、そして、アンドレ、アンドレ、わたしの夫と言うオスカル
二人のしあわせな時間がずっと続いて欲しかったと思うのですが・・・
夜があけて、運命の日が来てしまいます。