おれのオスカル
久しぶりに、「ベルサイユのばら」から記事を投稿します。
アンドレが、オスカルに対して、「おれのオスカル」と呼んだのは、作品中何回かあります。面と向かってオスカルに対して、そう言ったことは、ないと思います。アンドレの心の中だけの、アンドレの心の声です。
アンドレは子供の頃から、オスカルとずっと一緒に育ちました。身分の違いがあるため、オスカルを想う気持ちは、心の中にずっと秘めていました。
オスカルに愛の告白をすることができたのは、オスカルがフランス衛兵隊に移る直前なので、1788年のこと、二人とも30歳を過ぎていました。
アンドレがオスカルを「おれのオスカル」と心の中で呼びかけた場面は、一度目は、オスカルがフェルゼンに対する気持ちを諦めるために、ドレスを着た時です。
この時のアンドレは、かなり慌てています。アンドレにとっては、オスカルが男装していようと、していまいと、オスカルはオスカル、むしろ、ドレスなんか着なくても、オスカルがどれほど美しいか、どれほど女らしいか、分かっているのは自分だけだという、自負があるのだと思います。
それまでの二人の関係性を考えると、アンドレが、たとえ身分が下であっても、オスカルをおれのオスカルと呼んでしまうのもやむを得ないのです。
まったく、自分を飾らない姿で、アンドレに接するオスカルは、アンドレから見ると、ばあや以外だと、唯一の家族のような存在であり、兄妹以上、適当な表現がなかなか見つかりませんが、ジェローデルが言った、分身という言葉が、一番しっくりくるような関係性です。
ジェローデルとの結婚話があった時、初めて、オスカルはアンドレとの関係性を見つめ直し、そのような対象として考えたことはなかったと言っています。
男女というよりも、もっともっと、大切な存在、喜びも苦しみも、青春の全てを分け合って生きてきた、近く近く魂を寄せ合って生きてきたと言っています。
ジェローデルの方が、オスカルの本当の気持ちに気がついているところも、面白いところです。
ジェローデルは、オスカルが、アンドレを自分の分身のように思っていることを見抜いています。
そんな関係性を築いてきた二人だから、だからこそ、アンドレは、おれのオスカルが、ちゃらちゃらドレスなんぞ着て、男どもと踊るっていうのか、悪夢だと心の中で思っています。
でも、それでも、やっぱり、ドレス姿のオスカルの美しさに、目がチカチカして、すばらしくきれいだと言ってしまうアンドレ、そして、その姿はフェルゼンのためか、おれのオスカルと心の中で想うのです。
辛い片想いのように見えますが、アンドレにとっては、オスカルがフェルゼンに片想いをしている間は、少なくとも、オスカルがほかの男性を好きになることはないという、安心感があったのも事実なのです。
だから、オスカルが、フェルゼンと別れた時に凄く動揺して、オスカルに気持ちを打ち明けたのです。
そして、ジェローデルとの結婚話が起きた時のアンドレは、オスカルを失うかもしれない苦しみに、最悪な精神状態に追い詰められていきます。
二度目にアンドレが「おれのオスカル」と心の中で、呼びかけるのは、オスカルに毒入りのワインを飲ませ、共に死のうとするところです。
心中未遂、このアンドレの行動は、愛情ゆえの行為であったとしても、あまりにも身勝手な行動です。でも、このことが、どんな状況になっても、オスカルを守るという、アンドレのその後の行動に結びついていく、とても大事な場面なのです。