おまえの目でなくてよかった
アンドレの左目は黒い騎士に鞭で打たれ、潰されてしまいます。
オスカルはアンドレに偽物の黒い騎士になってもらい、本物の黒い騎士をジャルジェ家まで、おびき寄せて捕まえて話しを聞こうと思ったのです。ただの盗賊ではないと感じたからです。
オスカルは、自分のためにアンドレが、目を負傷してしまったことに責任を感じ、その後もずっと、責任を感じ続けていました。
アランとアンドレが取っ組み合いの喧嘩をした時にも、アランが「この、片目やろう」と言った時、アランを殴っています。そして、アンドレの目のことを侮辱する者は、いまから腕をみがいておいたほうがいいぞと言っています。
自分のために片目を失ってしまったアンドレのことを、目のことを侮辱されるのが許せないオスカルです。
それ以外にも、オスカルはアンドレの目のことを心配しています。
アンドレがオスカルに愛の告白をした時もそうです。部屋を出ようとして、一瞬目の前が真っ暗になった、アンドレの様子を見て、心配しています。
また、オスカルが銃をアンドレに投げた時、アンドレが受け止められず、銃がアンドレの頭にぶつかってしまったことがあります。その時は、見えていないのではないかと疑い、アンドレにナイフで斬りつけようとして、見えるのかどうか確かめています。
オスカルは、アンドレの片目を永久に奪ってしまったことに、ずっと責任を感じています。そんなオスカルだから、アンドレは、もう片方の目が見えなくなっていることを、余計に言えなかったのかもしれないです。
ばあやが言うように、医者にみせたり、経済的な負担をかけてしまうことを、遠慮する気持ちも、もちろんあったとは思いますが。
アンドレは、目の怪我をした時も、一言もオスカルを責めるような言葉を言わずに、おまえの目でなくて、よかったと涙を流していました。
そして、片目くらい、いつでもおまえのために、くれてやるさと言っています。オスカルは、パリ出動前夜、アンドレのことを、心やさしくあたたかい男性、そして、真に男らしいたよるにたる男性と言っています。
私もアンドレはオスカルの言葉通りの、男性だと思います。
そして、指示するまで、包帯はとらないように、片目を失明するかもしれないと医者に言われていたのに、オスカルを助けるために、包帯を外してしまうアンドレ、「しかたない、オスカルのためだ」と言うアンドレの姿に、まことの愛とはこのようなものだと感じます。
そして、自分の目がいつか、見えなくなってしまうことを察したアンドレは、「みえているうちに、おぼえてしまわねば、オスカルの行くところすべてを」と考え、階段の段数などを数え、おぼえようとするのです。
それは、たとえどんな状況になろうとも、オスカルのそばを離れずに、護衛したい、そんな気持ちの表れだと思います。こんな崇高な愛があるでしょうか。
こんなに優しいアンドレの残された目は視力を失い、見えなくなってしまうのです。