フランス衛兵隊にも、パリへの出動命令が出ます。
オスカルは命令に従うのかと問うアンドレに、進撃ではない、出動だ、ただのデモンストレーションだと答えます。
本当はそうは思っていない心のうちは明白なのですが、この頃のオスカルは、アンドレに対しても、自分の心のうちをすべてさらけだしてはいないように見えます。
そして、おれに馬をくれというアンドレに対し、ばかをいえ、そんな目で、おまえをパリに連れていけるか、おまえは残れと言います。
ここを読むと、オスカルは、片目であることを理由に、アンドレをパリに一緒に連れていかないと言っています。もし、アンドレの目が殆ど見えていないことに気がついていたら、アンドレを絶対に一緒に連れて行かなかったと思います。
それに対して、アンドレは、じょうだんではないぞ、おれを連れていかないなら、おまえも行かせないと、すごい剣幕で、オスカルの両腕を掴みます。
愛するオスカルを、一人で戦いの場所になる可能性が高いパリに行かせるわけにはいかない。アンドレは何があってもついていく覚悟です。
オスカルは、アンドレのその言葉にわかった、それでは馬を選ぶがよいと言います。
この頃、アンドレの心は決まっていて、迷いがありません。何があっても、オスカルの側を離れない、自分のするべきことがはっきりと見えているのです。オスカルのことを自分の命をかけて守ることしか考えていないのです。
もちろん、目が見えなくなっています。もしかしたら、足手まといになってしまうかもしれない、そんな不安はあるのかもしれませんが。
でも、オスカルの心はもう少し複雑なものを抱えているような気がします。
もっとも力弱き身分のものが、武器をとった。この先のフランスの行く末を考えています。そして、これから自分の進むべき道を考えています。
どんなことがあっても、自己の真実のみに従い、卑怯者とならないように、臆病者にならないように、祖国のために生きようと。
アンドレに対して、わたしが臆病者にならぬよう、しっかりとそばについていてくれと願うオスカルの姿がそこにはあります。