武官はどんな時でも・・
アンドレの片目を失うという大きな代償を払い、黒い騎士をやっと捕らえることができた時、オスカルは、黒い騎士への憎しみ、怒りを抑えることができず、鞭を振り上げます。
「おまえがわたしのアンドレにしたとおなじようにしてな」といって、鞭を振り下ろそうとした瞬間、オスカルの手を掴んで制止したのは、アンドレです。
個人的なうらみは忘れろ、そして、「武官はどんな時でも感情で行動するものじゃない」とオスカルに言います。アンドレの崇高な精神がはっきりと分かる場面です。
アンドレはただの従卒ではありません。オスカルが間違った行動をしようとする時に、それを戒めることができる人間です。この言葉は、オスカルの心の中に生涯残ります。
アンドレが亡くなった時、あまりの悲しみに、撃て、わたしを撃て、撃ってくれと叫んで駆け出した時、オスカルはその言葉を思い出します。
そして感情を抑えようとするオスカルです。でも、その言葉を言ってくれたアンドレはこの世を去ってしまったのです。
「けれど、けれど人間だ、人間だ、いっそこの胸をえぐりとってくれ、わたしを石にしてくれ、さもなくば、くるわせてくれ」と慟哭するオスカルの姿に胸が痛みます。
アンドレは撃たれた時も、指揮をつづけろと言います。隊長がなぜ、戦闘現場をはなれる・・と言います。
オスカルは、アンドレのことばに、
「ああそうだ、なぜ、なぜ、わたしは女だ、指揮さえつづけることができないほど、どうして女だ・・」
感情で動いてしまうオスカル、武官としては失格かもしれません。でも、わたしはオスカルがこの場で指揮を続けられたら、それはやっぱりオスカルではない、
この場ではアンドレの命がオスカルにとっては、一番大事なのです。
ここを読む多くの人が、オスカルに共感する場面だと思います。そして、自分のことより、隊長として、指揮をつづけろという、アンドレの精神性の高さにも感動してしまう場面なのです。