はるのゆめ

ベルサイユのばらが大好きです

キャラクターの変化について

オルフェウスの窓」は、4部構成です。四つの作品集と言ってもいいくらい、それぞれが趣きの異なる作品です。

オルフェウスの窓」の第1部は、とても面白い作品です。読者を作品の中にぐいぐいと引き込んでいく、ストーリーの面白さ、そして、魅力的な登場人物、そして、美しい絵柄は、池田理代子先生の作品の中でも、間違いなく傑作だと思います。

そして、第2部になり、ウイーン編、イザークが主役の物語です。絵柄は1部より大人っぽく、さらに美しさを増したようにも見えます。でも、1部ほど引きこまれないのです。

キャラクターの魅力が、1部ほど感じられないと思うのは私だけでしょうか。

例えば一例として挙げると、モーリッツは、なぜこんなに変わったのでしょうか。1部のモーリッツは完全な憎まれ役ですが、相当なインパクトのある登場人物でした。

自己中心的、幼稚性、そして、残忍性のようなものまで感じさせます。フリデリーケに対する、一方的なまったく見当違いの恋心で、イザークとフリデリーケを追い詰め、経済的に圧迫し苦しめ続けました。

小悪党で、いいか悪いかと言うと、悪ですし、私は好きにはなれないキャラクターでしたが、強烈な印象を残す人物でした。

ところが、モーリッツは、1部の終わりから2部では常識的な判断ができる大人の男性となっていきます。

2部で登場するモーリッツは、1部の面影は全くない人物です。そして、フリデリーケに瓜二つのマルヴィーダと不倫の恋に落ちます。

確かに、不倫の恋は描かれていますが、キャラクターに魅力が薄く、表面的な描き方になっている気がしてしまいます。何となく面白みにかけているのです。

2部の主役であるイザークも、アマーリエとの恋や、自分が目指す思うような演奏ができない苦しみ、そして、ロベルタとの結婚生活の苦悩も描かれています。

ストーリーとしては、綺麗にまとまっていると思いますが、読んでいて、心揺さぶられたり、共感したり、感情移入したりするような、人物としての魅力が薄いような気がします。むしろ、妻のロベルタの姿の方が心揺さぶられます。

1部ではユリウスに恋をするイザークの姿が描かれていました。ずっと片想いの恋でしたが、イザークの気持ちに共感でき、そして、生活のためにピアノを弾くその苦悩する姿にもとても惹かれました。

生真面目な性格ですし、その生真面目さゆえの頑固さもあります。そして、生きることが不器用な、そんなイザークを応援したくなり、感情移入して読んでいたと思うのです

そして、2部から登場する人物も多く、その登場人物それぞれにいろいろな物語があり、それを描きたいという作者の意図は伝わってくるのですが、どこに焦点をあてて読んだらいいのか分からなくなります。

何となく消化不良のような印象です。外伝で続きを描いているのかもしれませんが、いくつかのエピソードは、もう一歩踏み込んで欲しい、何を伝えたいのだろうと、少しモヤモヤしたものを感じてしまいます。

イザークもそうなのですが、3部で再び登場するクラウス(アレクセイ)、ユリウスも、1部の方がはるかに魅力的なキャラクターに描かれています。(3部の初め、アレクセイの少年時代のエピソードは良かったです)

それは、登場人物が、大人になってしまったからというだけでは、説明がつかない大きな変化を感じます。

2部以降は、イキイキとしたキャラクターを描くことよりも、すでに出来上がったストーリーを進めることが優先されているような気がしてならないのです。

このような感想を書きましたが、作品自体の価値を低くみているわけではありません。

ただ、長い作品ですし、絵柄の変化と共に、キャラクターの性格、作風も明らかに変化しているのが、「オルフェウスの窓」なのです。