はるのゆめ

ベルサイユのばらが大好きです

わけもなく涙が・・

アンドレが、毒入りワインを持って、オスカルの部屋に入ってきた時、オスカルは、ジャンジャックルソーのヌーベルエロイーズを読み涙を流しています。

「いぜん、読んだときはちっともいいとは思わなかった、それなのに、わけもなく涙が、胸がしめつけられて」と。

この少し前に、オスカルは、ジェローデルのキスから、ちがう、わたしの知っている唇はと、アンドレとのキスを思いだし、このあまいうずきはなんだ・・というシーンがあります。心で恋心を自覚する前に、肉体的にアンドレを猛烈に意識する、印象的なシーンです。

一方、アンドレも同じ本を読み、死によってしか結ばれない愛があると、オスカルを想います。そして死によってすら結ばれない愛を選ぶことを決意します。

「なぜ、わけもなく涙が、なぜだろうアンドレ」と、オスカルの涙を流す横顔と、思い詰めたアンドレの正面からオスカルを見つめる表情が、印象に残ります。

身分違いの恋をする小説の主人公たちに、オスカルの心は敏感に反応しています。この主人公たちに、身分違いの恋、この世では決して結ばれることのない自分とアンドレを重ねています。

だから、胸がしめつけられ、涙がとまらないのですね。まだ、自分の恋心を自覚していないのに、この描き方、やはり、池田理代子先生、只者ではありません。