マリー・アントワネットの第二子、ルイ・ジョゼフ殿下は、脊椎カリエスに罹り、余命はわずかです。
オスカル、おねがい、ぼくをおもてへつれてって、お馬にのっけてくださいというジョゼフの願いを聞き、マリー・アントワネットからも、どうかこの子のねがいをかなえてやってと言われ、ジョゼフとオスカルは外にでて馬を走らせます。
ジョゼフはこの時、心から幸せな表情をしています。大好きなオスカルと一緒に過ごすことができる時間です。せまってきている自分の死、病気のことを忘れることが出来た時間だったのではないかと思います。そして、ジョゼフは突然オスカルにキスをします。
「あなたがすき、こんど、うまれてきたら、きっと、きっと病気なんかしないで、元気で大きくなって、りっぱな青年になって、だから、まって、いそぐから、まって・・」
ジョゼフは元々とても聡明な少年ですが、病気がジョゼフの心を、その年齢よりも、さらに大人にしています。オスカルに言った、「いそぐから、まって」は未来を閉ざされている、ジョゼフの心からの愛のことばです。
オスカルは、マリー・アントワネットの三人の子供たちを愛していますが、その中でもジョゼフは特別な存在です。オスカルは、ジョゼフの聡明さ、そして、7歳という年齢でありながら、次期国王としてフランスを想う心に、尊敬の念を抱いています。
「あの窓にルイ・ジョゼフ殿下がおみえだ。けさ、ムードンからベルサイユにうつられた。このかがやかしい歴史の日を瀕死の目でしかと見つめておられるはずだ。」そして、「アンドレ、わたしは王妃になりそこなったぞ」と言います。
一方、ジョゼフもオスカルは、あのあたりかしら、剣をぬいて指揮をとっているかしら・・とオスカルを想います。
そして危篤状態になるジョゼフ
「ムードンへ、いきたい、今すぐとんでいきたい、せめて剣をささげ、たっていてさしあげたい」と涙を流すオスカル
二人の魂は年齢立場を超えて、お互いを想い合っています。
そして、ジョゼフが神に召されるシーン
「いっしゅん、とおい日々を追うように王子の瞳は虚空に向けて、明るくかがやいた」という記述と共に、輝くオスカルの笑顔、オスカルと馬に乗っているジョゼフ、そしてオスカルにキスをする自分の姿が、ジョゼフの瞳には映っていました。
そのあと、雨のなかを馬を走らせ涙を流し号泣するオスカルの姿
「いってしまわれたのか、ただひとりで、あなたのフランスが新しく生まれかわるのを、みとどけもせず、いってしまわれるのか」