はるのゆめ

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フェルゼンのために生きていると

「いまわたくしが生きているのは、愛する子供たちと、女王としてのほこり、まだわたくしたちをしたってくれている廷臣たちのためだけです」

オスカルにこのように言うマリー・アントワネット、その言葉がオスカルの心に引っかかります。

「フェルゼンのために生きているとなぜおおせにはなりませんのか」

「おっしゃってください、むかしのように、フェルゼンのために、フェルゼンへの愛ゆえに生きるのだと!」

近衛士官として、アントワネットに仕えていた当時、自分の気持ちに素直に行動しすぎるアントワネットを心配し、王妃としてのお立場をお忘れですかと何度も、王妃さまをおいさめしてきたオスカル、二人の立場が逆になったように見えます。

ここには、王妃と近衛士官という立場を超えた二人の姿が描かれています。同じ女性として、また、長い期間を共に過ごしてきた友人としての姿です。

オスカルは以前、夜をしのび、人目をしのんで会う二人を、「おいたわしい、王妃さまともあろうお方が、皇室になど生まれたばかりに、初恋も知らぬうちに、愛のない結婚をさせられ、わたしなら、がまんできない・・」と涙を流していたことがあります。

長い期間、おそばで、愛をこめて仕えてきた王妃さま、同じ女性として、マリー・アントワネットの心の痛み、苦しみ、悲しみが、分かっています

「愛しています、命のかぎりをこめて、けれど、どうしてそんなことが言えるでしょう、もどってきてくれと、このフランスに、わたくしのそばに」と泣き崩れるアントワネットに対して

「フェルゼンは必ず、アントワネットさまのおそばに戻ります。そういう男です。命の危険をおかしてまで、アントワネットさまへの、愛をつらぬいてきたフェルゼンです」とこたえるオスカル。

以前、ソフィアにも、誰よりもフェルゼン伯の心を知っているつもりですと言っていたオスカルだから、この言葉をアントワネットに、確信を持って言うことができるのです。そして、この言葉がこの時のアントワネットにとって、どんなに大きな励ましになったことでしょうか。

そして、オスカルの言葉通り、フェルゼンは戻ってきます。革命が起き、荒れ狂ったフランスに、ほかの貴族たちが、王妃さまのもとを去っていったそのあとに。

「ともに死ぬために戻ってまいりました。あなたの忠実な騎士にどうぞお手を・・」

と言うフェルゼンに私はいつも泣かされてしまいます。