肖像画の意味
肖像画のモデルになるのが、嫌いだったオスカル、「自分から肖像画を描かせるとあいつが言い出したのか」とジャルジェ将軍も驚いています。
オスカルは、「一枚くらい、ちゃんとした肖像画があってもいいだろう」と言っています。
でも、ばあやの「不吉な」ということばが、可笑しくもあり、実際何だか、これからのことを暗示しているようで、ばあや鋭いなと思ってしまう場面です。
以前、ロザリーがポリニャック家に行く前に、オスカルは自分の肖像画をロザリーに、「ロザリー嬢、あなたへのはなむけとして・・」と渡しています。
近衛連隊長の制服を着たオスカルの絵です。多分絵のモデルになるのが嫌いだったということは、ロザリーに渡したこの一枚くらいしか、オスカルの絵はなかったのかもしれません。
肖像画を描いてもらう動機は、もしかしたら、ばあやの言うように心境の変化から、思いついたことだったかもしれません。でも、この肖像画がストーリーの終盤大きな意味を持ってきます。
王太子と王太子妃が、パリを初めて訪問した時、馬車を先導する近衛隊士の中にひときわ輝くような美少年がいて、その姿を見て、ずっとこの少年を描きたい描きたいと胸が高鳴りましたと、画家は語っていましたが、その美少年は17歳の時のオスカルです。
画家にとっても、幸せな幸せな夢を見ましたというくらい、その日の太陽のように、きらきら、きらきらと輝いていたオスカルの姿です。
そして、その絵は、その日のパリの状況とも重なっています。期待以上に美しいマリー・アントワネットの姿に、40万の群衆は、熱狂的な喜びと声援でお迎えし、魅了されたのです。その日を思いださせるものです。
そして、ジャルジェ将軍やジャルジェ夫人、ばあやにとっても、オスカルの勇姿は誇らしい瞬間だったはずです。
今は市民たちは、王室を憎み、対立関係にあり、王家の軍隊がパリに続々と入り、市民たちも武装蜂起し、いつ暴動が起きてもおかしくない状況です。
この絵が完成し、披露された時、オスカルはこの絵の輝きに言葉が出ないほどでした。それは家族も同様でした。
そして、「ムッシュウ、なん年ぶりだろう、このように、まぶしいほどにやすらかな幸福、こころあらわれる、すがすがしさ」
すばらしい絵だと評価します。
そんな状況のなか、一人だけ苦しんでいるのがアンドレです。アンドレの目は殆ど見えなくなっていました。
「見たい、見たい、見たい、見たい、どんなオスカルが描かれているのか、なぜ、みんなさわいでいるのだ」と、ここは本当に辛いシーンです。
今記事にしていて、アンドレは4回も見たいと言っていることに、あらためて気づきました。本当に見たかったのだと思います。
そして、この肖像画は家族への別れのプレゼントともなりました。この絵を家族に残し、パリに出動していくオスカル
肖像画のまえには、父ジャルジェ将軍、全身を震わせて泣くジャルジェ夫人、そして、ベッドの中で泣くばあやの姿が胸に迫ります。